2010年1月例会 「ハンガー一筋60年!~環境と経営を語る~」
開催日  2010年1月22日
開催市町 豊岡市日高町
テーマ  「ハンガー一筋60年!~環境と経営を語る~」
講師   中田孝一(中田工芸株式会社・社長)
     (但馬学会員)
場所   中田工芸(株)本社・岩中工場
参加者  
担当   

1946年に創業。父・敏雄が、終戦後中国大陸の兵役から帰国し、家業の「荒物屋」の店番をしていた時に、戦争で疎開してきたハンガーを作る職人さんがハンガーを店に置いてくれと言われたことからハンガーとの出会いが始まる。終戦直後、但馬にいてもお客は少なく、何か売れるものはないかと外に売りに行こうと考え、地元の産品とともにハンガーをもって、神戸の元町や大阪の心斎橋に行った。テーラーさん等がハンガーに反応し注文があった。ハンガーは必需品だということを認識し、職人がハンガーを作り、中田氏の父が営業に回って業容を拡大していった。そして、そうしたなかでお客さんからの注文を受けてその技術も高められた。例えば、静岡は雑貨としてのハンガーの産地であったが、現在では輸入品にとってかわっている。うちは、テーラーから注文を受けたことが示すように、ファッション業界に出していたため、特注ハンガーを作る特別の技術力が備わった。



 この30年間を振り返ってみると、最初の10年(1980年代)はファッションが成長する頃で一緒に成長し休日出勤ばかりであったことを思い出す。これはバブル崩壊まで続き絶頂期には百名以上の職員がいた、登り坂の10年であった。次の10年(1990年代バブルの崩壊後)は、一転して苦労の10年であった。顧客のニーズも中国からの輸入を前提とした低価格指向になり、中国からのハンガーの輸入も開始した。余剰人員の適正化、その他機械設備の会社の構造転換に苦労した。そして、2000年以降のこの10年は、メーカーだがユーザーから直接に注文を受け、いかにナカタハンガーを認識してもらうかの10年が始まった。
 一例として、六本木ヒルズがナカタハンガーの中心的な活躍の場だ。ホテル、レジデンス、テレビ局、専門学校、有名ブランド専門店、これらのすべて又は多くが中田工芸のハンガーを使っている。まさにナカタハンガーがいっぱい詰まっている場だ。



 そして、別の場所でもホテル、内外の有名ブランドで中田工芸のハンガーが使われているとともに、日本一の有名アパレルでも使われている。
 新規市場としては、ブライダル市場がある。「福掛け(福と服を掛ける)」「世界で一つ(名前入りハンガー)」ということで、引き出物としてハンガーが使われ、毎日のように注文がある。また、記念品市場がある。たとえば、大手企業の新製品販売時のノベルティにナカタハンガーが使われた。さらに、創立記念日や卒業記念、昇進祝いや父(母)の日、誕生日といったものもある。これは全部made in JapanでNAKATA HANGERのロゴで作っている。
 ナカタハンガーのこだわりは、①メイド・イン・ジャパン、②ストーリー、③ネットワークで展開を図っている。①made in Japanは、日本人の感性と丁寧なモノづくり、②ストーリーとしては、職人が、コウノトリが飛ぶ自然豊かな豊岡で、手作りで作る、③ネットワークとしては、出会いやご縁を大事にし連携しているということだ。例えば、青山のショールームは、但馬を訪れたアパレル関係の方を案内したことがきっかけでわずか半年間で実現した。



 これらに基づきながら、この10年間はナカタハンガーのブランドを認識してもらおうとしてきた。
 環境との関わりとしては、端材をボイラーの燃料に使うなどリサイクルを行っている。具体的な例はアパレル・メーカなどのユーザーが消費者にアピールする際、使っているハンガーがエコであると情報を提示することにより、エコであることをPRできることとなり、重要なポイントとなっている。
 また、世界に対しても売ろうというのは、20数年前にも取り組んでいた。ドイツ、フランス、イタリアにも出かけたが、驚いたことにどこもハンガー会社は田舎の風光明媚な場所にあるということであった。アメリカにも行ったが、どでかい工場で工場内に貨車が走り、コンピューターのオンラインで結ばれ、24時間体制で作っていた。
 中田工芸も自然豊かな場所にあるが、売り先の多くは東京で、3人の職員が東京に駐在し、東京と日高を行き来するので高い旅費がかかっている。それがハンデと言えばハンデだが、ものづくりは地価や騒音問題などがあり東京ではできない。一方、こだわりやストーリーの点では、豊岡というこだわり、但馬のいいところを見せる、田舎だからこそできることを示せる、という点では優位な場にあるのではないか。

(報告者:谷岡)


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