2011年~2012年度 1月例会報告                              「なんとなぁ、但馬の米って、そにゃあなことでしたんか。」                   ~知られざる但馬のお米のお話あれこれ~
■□  但馬学研究会 2011年度~2012年度 1月例会報告  □■

日時:2012年1月28日(土) 12:00〜16:00
場所:但馬米穀(株) (豊岡市)
講師:下垣 巧氏
    中西 寛氏



【中西氏】
まず、昔の但馬の稲作の話。大東亜戦争が終わる頃、とにかく食べるものがなかった。
三菱で魚雷艇の新型ロケットエンジンを造っていたが、空襲で焼け、悲惨な暮らしをし
ていた。餓死寸前という状況だった。これでは駄目だという事で、農業をすることにな
った。稲作は政府の方針で、「食味」より「収量」が優先されていた。たくさんとれる
お米22号・23号・ニホンバレを作っていた。コシヒカリは後に明石の試験場で出来たも
の。

当時はまだ牛で田んぼを鋤いていた時代。牛を動かすのにも、餌を食べさせた後、
牛の反すうを待って、複数ある胃袋の最初の胃袋より二番目から後に餌が移るのを待た
なければ、お腹がぶぅっと膨らんで、死んでしまう事になった。人から牛を借りて農作
業をしたが、牛のケアを心配され、なかなか思ったように仕事が出来ず、牛を買って飼
う事にした。牛に鋤かせた土は、干からびると、土の悪いバクテリアが死んだり、土の
成分が出て、多くの肥料を必要としなかった。今のトラクターでの耕運だと、土が干か
らびないので、そんな効果が無い。

当時の日本政府からは、机上での収量予測で、一反
あたり6俵の供出を求められたが、出来ずに困った。強権発動で、ひどい目にあったこ
ともある。しかし、多くとれる年もあった。23号のお米で、一反あたり9俵もとれた場
合も。それは、肥料でも農法でもなく気候によった。お金に余裕が出来、肥料をたくさ
ん撒いた場所もあったが、稲が吸収する養分は決まっているので、肥料の撒き過ぎはも
ったいないし、稲が倒れるし、病気にもなる。また、肥料が少ないと、収量が足らなく
なる。真ん中あたりで稲作をするのが良いと、昔から聞いている。

現在の稲わらを田ん
ぼにコンバインでまくやり方をやるだけで、土は肥えていく。堆肥はムラになってまき
にくい。田んぼ全体が同じように稲が育ちにくい。

稲は自家受粉。花が咲くのもわずかに2時間程度。それも、開花時が「まん」が良く、
晴れ。植物がその時期を何故か知っている。稲は、今の多くの種子がそうであるように
F1というわけではない。自家受粉の特徴だが、何世代か同じ種籾で稲作を続けると、そ
の親の種の特徴を帯びるようになる。今のコシヒカリという品種は、収量がとれだした
後、食味が求められて出来た品種。しかし今後変わっていくと思う。但馬でも、ツヤヒ
メなどの種が多くなるのではないかと思う。

【下垣氏】
但馬の美味しいお米の条件
● 土質 蛇紋岩のある土はやはり美味しい。食味計でも、数字がでる。

● 気候 稲のでんぷん質が出来る時期に、夜の気温が25℃以下の暖かさがないといけ
ない。高いと、米が乳白米という白い状態になる。低いと不稔にも。年にもよるが、夏
の大事な時に熱帯夜が長く続くと悪い。しかし、但馬の気温差はむしろ良い。

● 水質と水温 円山川の水は、今は生活雑排水が入り込んだりして良くない。また、
六方田んぼの夏場の水温は、お湯のように高くて良くない。昔は、山田の棚田の方が美
味しくなかったものだが、温暖化も影響してか、棚田の水温が丁度良くなっている。生
活雑排水もなく、良い。神鍋や村岡などの標高が高いところが、美味しい。

農法あれこれ
V字農法 への字農法 あいがも農法と色々ある。それぞれ利点欠点がある。詳しくは
、ネットで調べる事が出来る。今の但馬では、無農薬より低農薬の方が食味は良い。

これから生き残る米農家
大きすぎる農家は、コストが合わないように感じる。小さすぎても合わない。2-3町歩
の規模が、日本の米農業に合っている。そんな農家が、但馬には多い。勘でやる農業よ
り、きちんとパソコンで計算して農業をすることが求められる。兼業農家や趣味でやる
農業は絶対に生き残る。TPPで米の関税が無くなることが考えられるが、大規模農家は
厳しいと思う。

アメリカやカナダでは日本の米が研究されていて、安いジャポニカ米が
入ってくる事は予想される。それを日本人が美味しいと思うかどうか、ふたを開けてみ
ないとわからない。日本で作る米がやはり美味しいと民衆が判断すれば、過度に心配す
ることもない。

【中西氏】
コウノトリ育む農法のお米について
豊岡市とJAの決め事に従った農法を実践し、許可を得ないと、そのブランドは認められ
ないが、農家なら誰でもブランドをとれる。問題は食味。あんなもの、美味しいはずが
ない。ブランド名が先走っている。食味は決して良いとは言えるものではない。まず、
作り方が問題。ほんとうに美味しいお米作りの条件では作っていない。野鳥などの生き
物の環境を良くするという物語があるので、それは人に伝えても良いと思うが・・・・
。(実際にコウノトリ育む農法のお米を人に食べてもらうと、ネガティブな意見が多い)

古い農家の方の意見は辛らつ。例えば、湛水にすることにより、土が乾かされて初め
て得られる養分の効果が期待できない。また、トラクターが踏み込んでしまう田んぼが
あるのも問題。このあたり、農家さんは言いたい事がたくさんあるようだが、言うに言
えない世の雰囲気だという。

JAに高く買い取ってもらおうと思えば、米の水分量を14.5%まで乾燥しないといけない
が、本当はそんなに乾燥させてしまうと、ガクンと食味が落ちる。16パーセントくらい
が良いが、それだと保存の関係か、JAは高く買い取ってくれない。

【下垣氏】
美味しいごはんの炊き方
とはいえ、但馬のお米は美味しい。ごはんの炊き方をきちんとすれば、なお美味しい。
今頃は昔と違い、精米が上手に出来ているので、ヌカがあまり着いていない。昔のよう
によくといで洗う必要はない。気になれば、ササッと洗って、冬ならせめて1時間は水
に漬けておくこと。普通の炊飯ジャーで、好みの水量で美味しく炊ける。但馬の米は但
馬の水で炊くのが美味しい。現在高額で高性能の炊飯ジャーが色々出ているが、あれは
まずいお米を美味しく炊くのには良いが、但馬の米を炊くと、表面がベチャベチャにな
って良くない。
                             【文責:岩本】
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