2010~2011年度 10月例会報告 「伝統野菜から新野菜まで ~ 気比をこよなく愛する若者の挑戦 ~」
■□ 但馬学研究会 2010~2011年度 10月例会報告

──────────◇◆ テーマ ◇◆────────────────────────

伝統野菜から新野菜まで ~ 気比をこよなく愛する若者の挑戦 ~

気比の野菜は有名で、豊岡の青空市場や、城崎温泉、丹後民宿街の野菜供給地となっている
特に里芋は絶品で、昔から受け継いできた種芋は気比の宝だ
なぜ気比の根野菜は美味しいのだろうか、それは・・・

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日時: 平成22年10月23日(土)12:00~
場所: ファームハウスのの花(豊岡市気比2373 tel 0796-28-3237)
http://www.nonoka.org/(音が出ますので注意してください)

講師: 留田幸大(とめだゆきひろ)氏 (ハッピーベジタブル代表・野菜アーチスト)
http://tano41.com/yasai/

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●食事でも留田さんの作っている野菜が使われました
・皮付き孫芋(里芋)の煮物
・焼き白ナスと小芋(里芋)、味噌添え
・ほうれん草のカルボナーラ
・サツマイモ(紅芋)ご飯
・サツマイモのヴィシソワーズ



●はじめに
「虫食いの見た目の悪いサツマイモ」と「見た目のきれいなサツマイモ」みなさんならどちらを買いますか?(2種類のサツマイモの袋を掲げて)と質問。見た目のきれいな方に多数の手が挙がる。「…後でもう一度聞きます」。

●農業に取り組むまで
昭和53年、気比生まれ。大学時代は地元を出ていたが、帰郷して就職。郵便局や販売の仕事などを経験した後、2007年頃より野菜作りを始めた。もともと親戚が農業をしていたため、その畑仕事を手伝うなど、幼い頃から畑仕事は身近なものだったが、子供に手伝えることと言えば、苗を運ぶ、穴のところに配置する、草刈りなど単純で簡単なことばかり。農業はそういう地道な作業の積み重ねなのだけれど、飽きてしまうこともしばしばだった。子供の頃、浜のほうにある畑に一人残されて草刈りを命じられたことがある。それは、大変心細かった思い出として強く心に残っている。だから草刈りは今も嫌い。

何をしようかと迷っていた時期、すぐそこに畑があった。それが農業を始めたきっかけ。親戚が農業をしていたので、支柱などの資材類を用意したり、農機具を買ったりという初期投資が少なかったのもよかった。また、自分で何かビジネスをやりたいという思いもあった。種をまき、水をやって自分が丹誠込めて育てた野菜。それなら他人が作ったものより自信を持って売れる。農業を始める前に経験した仕事も、いまの仕事に活かされている。



●気比野菜の魅力
「気比と聞いて、みなさんは何をイメージしますか?」参加者より「銅鐸、海岸、歌人、砂、湿地」などがあがる。
やはり気比の野菜の特徴は、砂地で作られること。砂の成分が多いと何が良いのか?乾燥に強い野菜が作れる。砂地では水をやるとスーッとすぐにしみ込み、乾くのも早い。肥料は効きやすいが、抜けるのも早いので、こまめにやらなければならない。
大根はエジプト、トマトはアンデスの山奥が原産。それぞれ祖先を辿ると、その野菜がおいしく作れる環境がわかってくる。

気比で受け継がれている伝統野菜に「里芋」がある。
冷めてもしっとりとして、もちもちしておいしい。夏の間、土の中で過ごし、親芋の周りに小芋、そのまわりに孫芋ができる。来年用の種芋としても使える。里芋は夏場に雨が降らないと大きくならない。作物は7年くらい経つとその土地に合った性質に変わり、その後はそれが遺伝していく。土地の性質に左右されるので、同じ種で作っても、同じ味にはならない。土地の恩恵を受けて、その土地に適したものに変わっていく。

サツマイモは冬を越し、あたたかくなったら土に植える。自分のところで種芋を作っているところはどんどん少なくなってきている。何という品種か?と聞かれることがあるが、品種はわからない。種芋を使って代々作り続けている芋の場合は、「○○さんちのサツマイモ」としか言えない。

白ナスの種は種屋では売られていない。熟すまで放置して、種を取って増やしていく。皮が弱く擦れるとすぐに痛むため、店頭に並びにくい野菜。野菜はスーパーで売るのに適したものだけが大量に流通していると思う。品質がそろわないと市場には出せない。売れない野菜は作らないという農家が増えてきている。

異なる品種同士を掛け合わせて作った交配種は、親の長所を受け継いだ種ができる。形がそろう・虫に強い・日持ちする・病気に強いなど、市場に受け入れられやすい長所をもつ野菜を、交配種なら作ることができる。ただし、交配種は3代目になると隔世遺伝して先々代の性質が出てしまう。そのため、交配種は種屋から買わなければならない。交配種以外の種がない。

伝統野菜は店頭に並びにくい。消費者のニーズが野菜の見た目がきれいかどうかにある。売れるか・売れないかは見た目で決まる。それがわかってきたので、種屋から交配種を買って売れる野菜を作るか、自家製の種から不揃いの野菜を作るかジレンマに陥っている。
気比で作りづらいものは作っていないからよく知らない。ゴボウ・ニンニクなどは粘土質の方がよい。

●農村の変化
農作業従事者の多くは、おじいちゃん・おばあちゃん世代。気比では30代で農業をしているのは留田さんただ一人。昔は畑だったところが、草むらになっているということが年々増え続けている。畑に人は来なくなったが、夜になると鹿の群れがやってくる。森林守り隊によって鹿が人里へ出てこないようにする森の整備なども行われているが、イノシシや鹿が出てくる。
畑を荒らして困るので、ワナ猟免許を取得した。これでワナを仕掛けることができるようになった。けれど、鹿やイノシシを処分できる資格ではない。猟友会に入会するのも諸処の事由で難しい。鹿やイノシシは柵を壊してまで畑へ侵入してくる。捕獲できるようにするための手続きが厳しく、結局は獲れないので、今は柵を作って侵入を防ぐしか対策がない。

●農業で大変なこと
天候に左右されること。今年は秋に入っても暖かい日が続き、夏の終わりに蒔いた葉もの野菜が育たない。春と勘違いしたのか、レタスは花が咲いてしまったので、売り物にならない。ホウレンソウなどはシーズンだが、暖かいと葉が白くなるベト病が出る。
病気をいかに防ぐか?病気の初期段階で処置するために、必要に応じて農薬を使用している。野菜に対しての農薬回数は決めていて、木が元気な野菜を作るように心がける。だから無農薬野菜ということでは競っていない。

交配種なら肥料をやればどんどん育つ。けれど病気には強くない。農薬を使う前提で作られた種なのだと思う。
他との差別化を図るために、西洋野菜などの珍しい野菜を作ることにした。スパイラル、ホースラディッシュ、ポロネギ、西洋ゴボウなどがそれだ。知らない野菜に、消費者の反応はいまいち。食べ方がわからないから取っ付きにくいということもあり、食べ方も教えながら販売する。

一方、ホテルやレストランではこれらの野菜の受けがいい。地元の食材にこだわるという世間の流れも後押し。地元農家で珍しい野菜を作るところが少ないため、需要がある。外国の種なので、育てるのは試行錯誤の連続だ。もちろん交配種ではないので、大きさや出来もまちまちなものになる。
野菜そのもの+ストーリーを大事にしてきた。野菜作りを始めた頃は、「僕農人(ぼくのーと)」という冊子を作り、どんな気持ちでその野菜を作っているのかを書いていた。今はブログでも情報発信している。



●現地視察へ。留田さんの畑を見て回る。

現地視察後は留田さんの野菜直売会。里芋・大根・サツマイモ・白ナスなどが並ぶ。
見た目のきれいさよりも、生産者のストーリーに触れたことが、この日の購買意欲に大きく影響していた。
(報告者:西躰)

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