2008年4月例会 「但馬の食文化を考える」~栄養士から見た食と健康~

開催月日   4月26日(土)
開催市町   豊岡市竹野
テーマ   「但馬の食文化を考える」~栄養士から見た食と健康~
講 師    田中香代子さん(地域活動管理栄養士)
場 所    竹野町須野谷「すのたに屋」
参加者    中田、峠、小川、戸田、能登、浜野、成田、谷岡、岩本か
       岩本め、久保、藤原次、西躰、太田、椿野、島垣、高石(17名)
       (会員外1名)
担 当    島垣、住吉、高石

講師の田中香代子さんは、豊岡病院の栄養士として昭和40年から38年間勤められた。定年退職後は、農業や地産地消などへの関心、保田茂先生の「食と環境」についての学習などを通して、病院時代の病気の治療・予防の取り組みとしての臨床栄養から、健康に大切な食生活を考えるようになったとのこと。
現在は、自宅で料理教室を開催したり母親を対象とした「食育」の取り組みを行ったりして、地域で栄養士として活動されている。

 

1. 医療現場で感じた食習慣の変化
病院勤めの時代を振り返ると、昭和40年当時は米の配給制度(米穀手帳)がまだ残っており、1食1合が常識であり米飯主体の食生活が普通であった。しかし、今では米飯は1日1合となってしまった。平均して大人1人あたり1日の活動に2000キロカロリー必要であるが、米1合=500キロカロリーとして、米3合の時代は米飯で1500キロカロリー、その他のおかずで500キロカロリーを摂っていたことになる。

現在、厚生労働省は穀類でカロリーの6割を摂取することを推奨しているが、いまは米離れでご飯が少なくおかずが多い食事になっている。食料自給率が40%を切ってしまっている今、米飯を見直さなければならない。

2.味噌汁を使った減塩指導の誤り
高血圧や脳卒中予防のため減塩指導を盛んにおこなった時代があり、味噌汁を持参してもらってその塩分濃度を測定してきた(減塩運動が盛んになったのは1970年代の後半からです)。その中で味噌汁が良くない、ととらえられてしまったことは大いに反省している。煮干や味噌の蛋白質、野菜や豆腐などを入れて身近で手軽な栄養食を遠ざける結果になってしまった。病院でもパン食の拡大、肉とマヨネーズ、ハムやソーセージの普及とともに味噌汁が減ってきた。昭和45年頃からマヨネーズが市販されたが、マヨネーズは15グラム=100キロカロリー。肉とマヨネーズ・ドレッシングをやめることでダイエットは出来る。

3.若者の食習慣、子育ての不安
子どもたちの食生活調査をしたら、箸がいらない食事が増え、パンも食パンでなく調理パンになり、家族はいても一人で食べる「個食」「孤食」が増えている。体重80キロで脂肪肝の小学6年生や栄養失調で入院してきた1歳半の子どもの食事を調べたら、パン、牛乳とジュース、ラーメン、たこ焼きなどを食べさせていることが分かって愕然としたことがあった。まな板がない家、家が汚れるからと魚を焼かない家が増えている。60歳台の女性でも魚の3枚おろしが出来ない人がいる。

家庭でどんな食事・料理をしているかが問題であり、「食育」は、繰り返しながら家庭で一緒に暮らし、米を炊いて食べ続けること、そのような食事の作り方を教えていかないと出来ない。

4.朝食は家庭における食育のチャンス、ご飯と味噌汁こそ和食の原点
世界的人口増加、化石燃料の不足によるバイオ燃料の拡大などにより、小麦など穀物中心に食糧価格が高騰しており、輸入に依存しているわが国の食糧は危機的な状況にある。     おなじ小麦でも、日本の小麦は中力粉でうどんに向くが、パンの小麦は薄力粉である。米粉のパンを作ろうという動きがあるが、ご飯と味噌汁を主体にした和食を見直し、とくに朝食にこだわりたい。離乳食も米と味噌汁で充分出来る。

 

5.学校給食の影響
学校給食が味覚を変えてしまったのではないか。ある雑誌の記事「学校給食ワースト3」にラーメン、ヤキソバ、パンが挙がっていたが、日本人が本来持っていた味覚を壊している気がする。行儀や作法を含めた食文化の破壊が進んでいると感じ、寂しくなる。

6.伝えたい食文化
もともとの土地で採れた旬のものを食べることを習慣にすることが大切であり、地元でとれるものでまかなっていくことでバランスのとれた食生活になる。主食をご飯にするとおかずが豊かになり、味噌汁が合う食事になる。食材を無駄なく調理する技術の伝承が必要であり、それが食糧危機に対する啓蒙と自給率アップにつながる。

7.流通の問題
食品アレルギーのもとは、加工食品の中に入っている抗酸化剤や防腐剤などに多くの原因がある。遠隔地から食糧を搬送して消費していることが問題である。スーパーでも地物を売っていない。もっと地元のものが手に入りやすいシステム、場作りが必要である。卸売市場にも地元産の物が少ないが、消費者が求めるものは販路に入ってくるので消費者が変わらなければだめである。

 安いからという理由で、例えば中国から大量の野菜類が輸入されているが、農薬の問題だけでなく輸送にかかるエネルギー問題が大きいし、生産地である中国の土地はやせていき多量に消費される日本の土地は富栄養化となる。生産する技術の担い手(農家)も育たなくなる。農協の役割が大切である。






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